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アトピー性皮膚炎にワセリンが効く

アトピー性皮膚炎に対して、ワセリンに予防効果があるということが理化学研究所の研究成果によって明らかになりました。
アトピー性皮膚炎の新たなる治療法や予防法の確立につながるものとして期待されています。

 

意外と多いアトピー性皮膚炎患者

アトピー性皮膚炎の患者数の実態については、現在大規模な疫学的調査は行われていませんので、正確なところはわかりませんが、国民の1割はアトピー性皮膚炎に罹患している(かかっている)と考えられています。
2015年12月17には、国が3年に1回実施している患者調査の2014年(平成26年)の結果が公表されています。

それによると、2014年のアトピー性皮膚炎の総患者数は45万6千人になっていました。
これは、前回の2011年の調査が36万9千人だったことと比較すると、3年で8万7千人も増えたことになります。

 

ワセリンがアトピー性皮膚炎の予防に有用だとする実験

研究グループは、マウスに突然変異を起こさせるエチルニトロソウレアという物質を投与して、アトピー性皮膚炎を自然発症するマウスを作製することに成功し、さらにアトピー性皮膚炎の病因となる遺伝子を調べています。

その結果、細胞の増殖や分化に重要な役割を果たすサイトカインの情報伝達因子であるJAK1分子の遺伝子配列に突然変異が起こっていることを突き止めています。

JAK1分子の遺伝子配列に突然変異を起こしたことによって、JAK1のリン酸化を促すキナーゼという酵素の活性が高まり、表皮細胞の古い角質が剥がれるときにでるプロテアーゼという酵素の遺伝子発現が増えることで、細胞バリア機能の低下が起きていることがわかりました。

マウスの表皮に保湿効果のあるワセリンを肌に塗ることで、アトピー性皮膚炎の皮膚バリアの破壊を防いで、角質の適切な新陳代謝を促すことで、ワセリンがアトピー性皮膚炎に対しての予防効果を発揮していることがわかりました。

人間においても6人中4人に同様の遺伝子異常が起こっていたことがわかっていて、今後、皮膚バリアに関連した研究として、アトピー性皮膚炎の予防や治療法にも役立つ研究として期待されています。

 

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日本皮膚科学会では、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版を既に発表しています。

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopicdermatitis_guideline.pdf

ここで推奨されている治療法は、薬物療法に皮膚の生理学的以上に対する外用療法やスキンケアを行い、悪化因子の検索と対策を基本としています。

薬物療法としては、ステロイドの外用と、タクロリムス軟膏、それに痒み対策として内服の抗ヒスタミン剤が出ています。
しかし、このガイドラインの中には「ワセリン」という言葉は1回も登場してきていません。

今後、ワセリンとアトピー性皮膚炎の研究が進めば、こうしたアトピー性皮膚炎診療ガイドラインの内容も変わっていくのかもしれません。