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がんの早期発見に線虫の化学走性を利用したN-NOSEとは

10月1日、東京にあるベンチャー企業「HIROTSUバイオサイエンス」から、興味ある発表がありました。 それは、 『N―NOSE(エヌノーズ)』

N-NOSE(エヌノーズ)って何?

『N―NOSE(エヌノーズ)』は、線虫を使った早期がん発見のための検査システムです。 線虫は嗅覚にすぐれていて、がんの匂いに引き寄せられるということがわかりました。

こうした線虫の特殊能力を生かして、たった1滴の尿から、いろいろながんのリスクを高精度に判定できるというものです。

がんの匂いとは

がんの診断には、腫瘍マーカーが用いられたりしますが、採血など患者の負担が大きく、検査にもいろいろと時間と手間がかかってしまいます。

そこで、がんの匂いというものが注目されてきました。

実際に、健常者とがん患者から呼気や尿、唾液などを採取し、成分をガスクロマトグラフィーにかけて分析した結果、がん患者には特徴的に多く、または少なく検出される成分があることがわかっています。

(参考)

Y. Saalberg and M. Wolff: VOC breath biomarkers in lung cancer; Clin Chim Acta, Vol. 459, pp. 5–9 (2016)

M. Phillips, R. Cataneo, C. Lebauer, M. Mundada and C. Saunders: Breath mass ion biomarkers of breast cancer; J Breath Res, Vol. 11, 016004 (2017)

 

そこで、人間よりもはるかに嗅覚に優れた犬をがん検知犬とすることも試みられてきました。

しかし、犬の能力差やがん検知犬の数などいろいろな問題がありました。

そうであれば、がん検知犬に代わる生物として何か存在しないかと研究されてきたところ、発見されたのが C. elegans (シー・エレガンス)という体長約1mmの線虫でした。

線虫というと、回虫や蟯虫といった寄生虫を連想される人もいるかと思いますが、 C. elegans (シー・エレガンス)は、線形動物門双腺綱桿線虫亜綱カンセンチュウ目カンセンチュウ科に属します。

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この C. elegans という線虫の化学走性(好きな匂いに近づき、嫌いな匂いから遠ざかる)を調べたところ、がん患者の尿のにおいを好んで近寄り、逆にがんではない人の尿は嫌って遠ざかるという性質があることが分かったのです。

(参考)

A Highly Accurate Inclusive Cancer Screening Test Using Caenorhabditis elegans Scent Detection PLOS ONE, 10(3)

線虫は、土壌に生息する微生物であり簡単に増殖させることができ、しかも尿1滴程度で、がん患者約1400人の検体を使った臨床研究で、約85%の確率で判定できました。

特に早期のステージ0~1の患者を判定できるとして、がんの早期発見に役立つと期待されています。

現在では、15種類のがん(胃、大腸、肺、乳、膵臓、肝臓、前立腺、子宮、食道、胆嚢、胆管、腎、膀胱、卵巣、口腔・咽頭を検出できますが、がんの部位までは特定できません。

(参考)

N-NOSE: A Detection System of Early Cancer on Olfaction of Caenorhabditis elegans システム/制御/情報 62(12), 496-501, 2018

今後は、がんの部位まで特定できるように遺伝子組み換え線虫を用いた「がん種特定検査」研究が進められていく予定になっていて、2022年の実用化を目指しています。

 

N-NOSE(エヌノーズ)について、もっと詳細に知りたい人は、コチラを参考にしてみてください。

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