強さだけではない! 羽生結弦選手が、リンクで輝いて見える本当の理由
羽生結弦は、どこまで伸びるのであろうか。
今までの世界最高記録は、カナダのパトリック・チャン選手が持っていた295.27点。
300点を超えるのはフィギュアスケート選手の夢であったが、これをあっさりと超えてしまった。
史上初の300点超えなんてもんじゃない! ショート・フリーともぶっちぎりの1位の完全優勝。NHKのアナウンサーが「次元が違います」と言っていたのも、けして過言ではないでしょう。それだけの出来だった。
322.40点、2~3点やっと超えたなんていうもんじゃない、22.40点もオーバー。
この強さは一体どこから来ているのだろう。
フィギュアスケートMemorial グランプリシリーズ2015 in スケートカナダ
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絶対王者の自信を裏づける努力と感謝の心
試合後コメントを求められた羽生結弦選手は、次のようなコメントを残している。
「緊張したんですが、長野のオリンピックがあったリンクで滑ることで、自分自身にプレッシャーをかけて、絶対王者だぞと言い聞かせてやっていた。」
このコメントだけみると、若干20歳で、「絶対王者だと言い聞かせる」とはなんて思いあがった奴なんだと思うかもしれません。しかし、そのぐらい強い気持ちを持っていないと押しつぶされてしまいそうな緊張感の中にいたのでしょう。
そのあと、羽生選手は続けています。
「とにかく、ここまで、すごいハードな練習をしてきましたけれども、ケガをしないでこれた自分の体、ケアしてくれた先生たちに感謝しつつ、これ以上の演技ができるよう、練習を積んでいきたい」
最近は、『クールなあひる』になりたがる人が多いと思います。陰で一生懸命努力するが、実際には人には努力はみせない。すごく大変なことを涼しい顔をして当然のようにやってのける。
ちょうどアヒルが水面下で一生懸命水かきで水をかいていても、水面では涼しい顔でいかにも優雅に泳いでいるような感じです。
しかし羽生選手は、『クールなあひる』になろうとするのではなく、自ら「ここまで、すごいハードな練習を・・・」と言っちゃっている。
20歳という年齢を考えたとしても、ここまで言ってしまうというのは、相当大変な練習をしてきたのであろう。
ちなみに、この羽生結弦選手のコーチは、キム・ヨナ選手も育てたブライアン・オーサー氏である。
このブライアン・オーサー氏は、フィギュアスケートのコーチを一種のビジネスと考えていて、一人ではなく、企業のようにチームで行っていくものであるとしています。
実際に、ブライアン・オーサー氏は、演技に関する振付師、ジャンプのエキスパート、スピンの専門家などのように各パーツごとに一流の人材を集めてきて、合理的な指導を行っています。
またブライアン・オーサー氏は、戦略にもたけている。スケートの演技構成点が基礎的なスケート技術に対する評価であり、演技構成点と技の出来映えは一つながりで評価されることなどの情報をもとに、緻密にプログラムを構成するというのです。
羽生結弦選手の才能はもちろんですが、こうしたチーム・ブライアンとしての綿密な計画が、322.40という高得点を叩き出したのでしょう。
ブライアン氏は、ソチ五輪の後に、羽生結弦選手に次のような「贈る言葉」を出している。
すべて全力ではなく、リラックスする、ミスも受け容れるという境地に至ってほしいと思っています。
羽生結弦選手が輝いて見える本当の理由とは
羽生結弦選手が、リンクの上で本当に輝いて見えるのはナゼなんだろう。
もちろん、彼の努力に努力を重ねて習得したワザもその一つにあるであろう。
でも、羽生結弦選手がリンクで輝いてみえる本当の理由は、フィギュアスケートを心から愛しているからなのだと思います。
それは、羽生選手のNHK杯優勝後のインタビューが物語っています。
「練習をさせてくださった周りの方々、サポーターの皆さま、カナダのクリケットのリンク、生まれ育った仙台のリンク、全てに感謝したい」
羽生選手は、五輪の金メダルのとき、「金メダルはみんなに恩返しするためのスタート」と言っています。
有言実行、これからも羽生選手の恩返しが続いていくのであろう。
そしてブライアンコーチをして、「ことばがない。彼はショートプログラムとフリーの両方を心から愛し、練習に一生懸命取り組んできた。きょうの演技は、目撃した全員が永遠に忘れないだろう」と言わしめた。
東日本大震災でリンクが被災し、さらに昨年はフィギュアスケートGPシリーズ中国杯の直前の練習で中国の閻涵選手と激突しながらも強行出場した。これに対しては無謀だという人もいるであろうが、これは羽生選手がいかにフィギュアスケートを愛しているか、そしてファンを大切にしているか、さらに激突して心配してくれている中国の閻涵選手への彼なりの気遣いもあったのかもしれない。
多くの経験を経て、常に忘れなかったのが、周りへの感謝の気持ち、他人への思いやり、相手への気遣い。
こういう羽生選手だからこそ、チーム・ブライアンの中でもうまくやっていけたのであろう。