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やっぱり増田明美さんは名解説者だった

2016年1月31日、第35回大阪国際女子マラソンが行われました。
結果は、福士加代子選手がライバルが次々と脱落していく中、トップを独走してゴールテープを切った。

 

増田明美さんのマラソン愛

解説をしていたのが、タレントの武井壮さんと元五輪女子マラソン代表でもある増田明美さん。

増田明美さんは、上品な声に加え、いろいろな選手のエピソード、交友関係から趣味、さらには応援団のちょっとしたネタなどきめ細かな情報までと、パーソナルデータを織り交ぜた奥行きのある解説をすることから、走っている姿を2時間30分以上に渡って映すマラソン中継に、ときどきスパイスを加えてくれる名解説者です。

その取材力には驚かされるものがあり、しつこいぐらいにしっかりと細かいところまで取材する力、それを覚えておく力、そしてそれをタイミングよく話題としてはさむ構成力、さらにやさしく語りかけるような口調、マラソン解説には欠かせない解説者で、常に冷静で、しっかりとした解説をしてくれる。
選手のホームページまでチェックしているそうです。

選手には優しく、しかし大会選考などで自分が納得いかなかったら日本陸連にも抗議するほど。マラソンに対する愛を感じます。


プロ中のプロの増田明美さんが崩れる

いつも淡々と優しい声で面白い選手のエピソードなどを解説してくれる増田明美さん

しかし、この日のラスト1kmは違った。

増田明美さんは、福士加代子選手がゴール手前1kmぐらいになったとき、いきなり泣き出して、その後は番組に出てこなくなり、やさしい声を聞くこともなかった。
ただすすり泣く声が聞こえるだけで、エンディングにも出てこなかった。

アナウンサーが増田明美さんに

 

「周回道路を歩んでいましたけれど、あの時とは違うこの福士選手の走りということになりますね。2012年、2度目の五輪選考会まさかの失格。しかし、諦めなかった!!」

 

と話しかけると、急に涙声になり、

 

「よかったですね・・・」

 

と一言いった後、言葉にならなかった。


杓子定規に考えれば、プロとしてはあるまじき行為であり、ゴールテープを切る瞬間が、もっとも感動的なシーンであるにもかかわらず、画面からはずれ、一言もしゃべらない。プロ中のプロの仕事としてはいかがなものか?


ゴールの時に泣いているだけってプロとして失格?

 

こう叱責する声が聞こえてくるかと思いきや、ネットでは「もらい泣きした」というような声が殺到。苦情にはならなかった。

これはもちろん増田明美さんの人に優しく真面目な性格によるところもあるだろうが、深い深い理由があった。

福士加代子選手は、ほぼリオ五輪の切符を手中にし、あっけらかんとしているくらい、画面ではイケイケ姉ちゃんみたいな感じであり、3000メートル、5000メートル、ハーフマラソンの日本記録保持者。1万メートルでは6連覇している。
しかし、マラソンだけは期待されながら、2008年の初レースの大阪国際では何度も転倒し、五輪選考は二度の失敗。

彼女は彼女なりに相当に悩んでいたらしい。

増田明美さんは、他の選手と同様、福士加代子選手についてもしつこいぐらいに取材していたのであろう。
そして、ここ8年結果が出ずに苦しんでいた福士加代子選手のことを間近に見てきた。8年間、苦悩に悩み、それでもあきらめずひたすら練習を重ねて来た福士加代子選手、誰よりも深く、そして長くその苦労に接し、取材を重ねてきたからこそ、情が移ったのであろう。

普段は丁寧で冷静な増田明美さんが、あそこまで崩れたのは初めて見ました。


選手に深く入り込み、取材を重ねている増田明美さんだからこそ、号泣につながったのだと思いますが、あのすすり泣きは、言葉以上のものを語っていました。
細かくはわからなくても、8年間、福士加代子選手がどのような思いをしてきたか、下手な言葉で長々と説明するよりも、何倍、何十倍ものものを伝えることができたのではないだろうか。

やっぱり増田明美さんは、マラソン愛にあふれた名解説者

画面ではイケイケ姉ちゃん風の福士加代子選手だけに、彼女の苦悩は伝わりにくい。
しかし、増田明美さんの号泣が、すべてを説明していた。そこには言葉なんかいらない。

あの場面、冷静な解説を淡々と長々と聞かされるより、感動の涙のほうが多くの人の共感を生んだのでしょう。
それは、普段のマラソン愛にあふれた誠実な増田明美さんを知っているからでしょう。

しゃべるよりも涙で多くのことを視聴者に伝えた増田明美さんは、やっぱり名解説者と言えるでしょう。