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ノーベル医学賞受賞、オートファジーとは

東京工業大栄誉教授の大隅良典氏(71)がノーベル医学生理学賞を受賞しました。
「オートファジー(自食作用)」の研究による受賞ということですが、大隅良典特任教授らは1993年に出芽酵母のオートファジー不能変異株群・atgの同定に成功し、これによりその後の怒濤のようなオートファジーの研究が展開されていくきっかけとなりました。オートファジーとは何なのでしょうか。

オートファジーって何?

オートファジーというと、オート(自動)でファジー(あいまい)って???となってしまいますが、実はオートファジー=Autophagyのautoはギリシャ語で「自己」、phagyはphage等と同類で「食べる」の意になっています。日本語に訳すと『自食作用』とか『自己貪食』などという、なんかすごいイメージが持たれそうな訳語になってしまいます。
ズバリ言ってしまえば、細胞が自己成分を分解する機能ということになります。

オートファジーの応用分野

オートファジーの研究は飛躍的に発展し、オートファジーが発がん、神経変性疾患2型糖尿病等の生活習慣病心不全、腎症、感染症、各種の炎症など、さまざまな重要疾患の発症を抑止していることがわかってきています。
またオートファジーは、発生・分化、老化、免疫などにおいても重要な生理機能を持つことが明らかになってきています。
また、オートファジーは栄養飢餓時に特に激しくおこります。食事から栄養がとれないときは、細胞は自身の一部を過剰に分解してそれを栄養素としているようです。

 

タンパク質の合成と分解

人間の体は約60兆個の細胞からできていますが、細胞と細胞の間にはタンパク質、脂質、糖質、核酸などいろいろな生体分子が存在しています。中でもタンパク質はもっとも量が多く、人間では2万種類以上のタンパク質が作られていて、酵素として生体内の化学反応を制御したり、酸素や栄養素の運搬をしたり、ホルモンやそれに対する反応を起こしたり、筋肉の収縮をさせたり、細胞の固定や接着に関与したり、抗体として微生物などからの防御を担ったり、細胞の構造の保持などしたりと様々な働きをしていて、生命活動の基本となっています。
そのタンパク質は私たち人間は1日に約60~80g食事から摂っていますが、体の中では1日に160~200gのタンパク質が合成されます。これは実は合成量とほぼ同量のタンパク質がアミノ酸に分解され、それをタンパク質合成の材料としてリサイクルしています。

タンパク質の分解

タンパク質の分解は、プロテアソーム等による選択的タンパク分解系と、非選択的なバルク分解系があり、バルク分解系は万能システムです。
プロテアソームが、ユビキチン化された標的タンパク質を一分子ずつ選択的に分解するのに対し、オートファジーでは細胞内のある空間がごっそりリソソーム酵素で分解されるためバルク(要するに大雑把な)分解系と呼ばれます。

1.オートファジーで生体物質が分解される際には、分解対象となる生体物質に「目印」となるたんぱく質が結合します。
2.「オートファゴソーム」と呼ばれる脂質膜の袋がその目印を認識して分解対象の生体物質を包み込みます。
3.リソソームや液胞などの分解専門の器官に運び込みまれ、オートファゴソーム内のタンパク質や細胞内小器官が分解されます。

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オートファジーは、しばしば資源のリサイクルに例えられ、特に飢餓のような状態ではリサイクルが非常に強まり、オートファジーにより、細胞内はきれいな状態が保たれます。細胞内に侵入する細菌を排除する仕組みなどにもオートファジーは関わっているとされています。

 

 

 

 

 

細胞が自分を食べる オートファジーの謎 (PHPサイエンス・ワールド新書)

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ユビキチン‐プロテアソーム系とオートファジー―作動機構と病態生理
 

 

 

実験医学 09年11月号 27ー18 特集:疾患に対抗するオートファジー

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