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味わい深い名曲『なごり雪』

 先日、関東地方にも季節外れの雪が降りました。
真っ白な雪が薄いピンク色に咲いた桜の花の上に積もる『桜隠しも見られました。


この季節になると情景に浮かんでくるのが、伊勢正三が作詞作曲し、イルカさんが歌った名曲なごり雪です。


伊勢正三さんの詩は、状況がすんなりと浮かんできて、切なさの中にどこか暖かさがあり、切ないんだけどもけしてネガティブではなく、これから頑張っていこうぜというような感じのものが多い気がします。

歌というのは面白いもので、ある時、瞬間的にヒットしても10年も経てば忘れられて行ってしまう歌も結構あります。

その一方で、いつまでも色褪せることなく人々の心に残り、歌い継がれていく歌もあります。

伊勢正三が作詞作曲でイルカさんが歌っている『なごり雪』も、そうした後者の代表的な歌の1つでしょう。

 

作詞作曲を手掛けた伊勢正三さんの故郷でもある大分県津久見駅では、発着メロディーにこのなごり雪が使われていて、日豊本線の全列車の車内でもこのメロディーが聞けるそうです。

 


イントロの妙と歌いだし

 

なごり雪を語るにあたって、まずは最初のイントロ部分。
しんしんと降っている雪とぴったりマッチするメロディーになっています。

そして

♪ 汽車を待つ君の横で僕は 時計を気にしてる

♪ 季節はずれの雪が降ってる

この部分だけで、汽車を待っているんだから駅だな
汽車というと、蒸気力を動力として走る機関車によって引かれた客車・貨車ということになります。
昔の状況が浮かんできます。

君の横で僕はというんだから、主人公は男でその脇に家族か恋人か友達がいるんだなとわかります。

そして、季節はずれに雪が降ってるというところと、曲のタイトルのなごり雪から、駅のホームや線路に雪が深々と降っている、なごり雪といえば、春にはいってから降る雪ですので、春なのに肌寒い状況がたったこれだけで映像のように浮かんできます。

そして、君と別れたくない撲、あとどのぐらい君と一緒に入れるのだろうか。ついつい時計に目が行ってしまうという心情もありありと伝わってきます。

これだけの短い句で、ここまで具体的に状況をイメージできるのは、さすがにプロの作詞家というべきでしょうか。


3つのなごりをさりげなく歌い上げた名曲

 

♪ 東京で見る雪はこれが最後ねと さみしそうに君がつぶやく

場所は東京。
伊勢正三さんが『なごり雪』を作詞作曲したのが1974年。
東海道新幹線ができて10年、長嶋茂雄さんが現役を引退した年でもあります。

しかし、♪汽車を待つ君の・・・となっていますが、1974年に11月には本州から蒸気機関車は姿を消しています。

別れを名残惜しむ”なごり”
季節はずれの雪の”なごり”
そして姿を消しつつある汽車に対する”なごり”

だから、列車でもなく、電車でもなく、汽車なのかもしれません。

3つの”なごり”がみごとに重なっているのです。
堅苦しい言い回しは無しに、さらりと3つのなごりを歌詞に入れ込んだ伊勢正三さんは、まさに天才といえるでしょう。

それと同時に、本州から汽車がなくなる、1974年よりも前の状況のことということが推測できます。

1974年というと、10円玉専用の小型青電話がやっと設置されはじめた年、赤電話のダイヤルを指で回しているような時代で、現在のように遠く離れていても、インターネットで映像つきで会話できるというような時代ではありません。

東京で見る雪が最後ということから、もう東京へは戻ってこないんだなということになります。

♪ さみしそうに君がつぶやいた。 というのは、君が本当にさみしそうだったのか、それとも撲が勝手に君がさみしそうにつぶやいたように見えたのか。
名残惜しい撲が、そう感じたという感情の機微が見事に歌われています。

 

雪の擬人化、伏線をはってつながる数々の言葉

 

♪ なごり雪も降るときを知り ふざけすぎた季節のあとで
♪ 今春が来て君はきれになった 去年よりずっときれいになった

まずは、「なごり雪」の擬人化。降るときをわきまえて降っているなごり雪という言い回し。

降るときを知りといっているくらいだから、なごり雪が降っていることに対しては、むしろ歓迎しているととれます。

ぴったりのムード、思い出として降ってくれたなごり雪に感謝といったところか、それとも東京を出ていく君が、最後にまた雪を見ることができたということへの感謝の気持ちなのか、そういうところから、「降るときを知り」となったのでしょう。

♪ 去年よりずっときれいになった
ということは、撲は君のことを去年から知っていたんだなということがわかります。

そして2番の歌詞の中に、 ♪ 時がゆけば幼い君も 大人になると気づかないまま とあります。
つまり、撲は幼いときの君も知っているということになります。

あるいは、年齢的に幼いというのではなく、幼いと子ども扱いしていたが、いつのまにか精神的に成長し、大人に成長していたというようにもとれます。

そして、「幼い君も」が、「ふざけすぎた季節のあと」とも見事にリンクしています。

季節というのは、もちろん、今春がきて~ の前の季節の「冬」という解釈もできますが、春夏秋冬の季節というよりも、人生における君と一緒にいた季節というような解釈もできます。

幼いから子供のようにふざけるということで、見事な言葉のチョイスがされています。

♪ 君が去ったホームにのこり 落ちてはとける雪を見ていた
♪今春が来て君はきれいになった 去年よりずっときれいになった

君が去っていったホーム、しんしんと降り続ける雪、汽車は行ってしまったのに、落ちてはとけていくなごり雪をただ見つめている。
そこに名残惜しいという感情がみごとに伝わってきます。

でも、この曲には悲壮感はありません。それよりも去年よりも立派に成長した君を祝福するような、おめでたい感情が感じられます。

イルカさん伊勢正三さんからこの曲をもらったとき、最初はかぐや姫のヒット曲なんだし、私が歌うなんて・・・とためらっていました。
伊勢正三さんは、イルカさんに、好きなように自分が考えるとおりに歌っていいよと言ったそうです。

伊勢正三さんが歌っていたときに比べて、イルカさんが歌ったとき、
♪ 今春がきて 君は きれいにー なったー というように、「きれいにー なったー」と伸ばして歌ったそうです。

そして『なごり雪』といえばイルカさんと言われるくらいの大ヒットとなりました。

本当にきれいになったねーーー おめでとう! よかったね! というような感じで、感情をこめてイルカさんが歌ったとき、この部分が自然と「きれいにー なったー」というように伸びたのかもしれません。