気遣い・思いやりの心をもった魚
人間が生きていくにあたり、協調性や相手に対する思いやりというものは非常に大切で尊いものです。
困ったときにお互いに助け合うことにより、難局を乗り越えていくことができるのです。 協調性や相手への思いやりというと、いろいろと考えることができる人間ならではのものなのかもしれませんが、協調性、相手への気遣いや思いやりということで頭に浮かんでくる魚がいます。 それがホンソメワケベラという魚です。
もちろん、魚ですので、考えての行動ではなく、もともと持っている本能や性質ということなのかもしれませんが、面白い行動様式なのでご紹介したいと思います。
他の魚と共生する魚、ホンソメワケベラ
魚にホンソメワケベラという海水魚がいます。
スズキ目ベラ科の魚で、体長12cmほどの魚で白地に黒帯の特徴的な体をしていますが、この魚は掃除屋さんとしても知られています。
他の魚は、ホンソメワケベラを見つけると近寄っていくのです。これはホンソメワケベラを捕食するためではなく、体表について寄生虫を捕食してもらうためなのです。
そしてホンソメワケベラは近づいてきた魚の周りを泳ぎ回り、エラや口の中に入り込んで、食べかすなどを食べてまわります。
寄生虫を取ってもらうほうの魚としては、ホンソメワケゲラを捕食してしまったら、寄生虫をとってもらえなくなるので、自分にとってメリットのあるホンソメワケベラを捕食することは滅多にないということで、他の魚との共生が成り立っているのです。
本当は寄生虫が好きなわけではないホンソメワケベラ
ホンソメワケベラは、非常に夫婦仲が良い魚で、雌雄2匹がツガイとなって、他の魚の寄生虫を取り掃除していることがよくあります。
他の魚の寄生虫を食べているホンソメワケベラですが、実は寄生虫が好きなわけではないことがわかっています。 では、なぜ好きでもない寄生虫を食べているのかというと、一つは捕食されないためというのもあるかもしれません。
そして、ホンソメワケベラが好きなのは、他の魚についた寄生虫ではなくて、他の魚が分泌する粘液が好きなのです。
それじゃ分泌される粘液だけ食べればいいじゃないか!と思うかもしれませんが、そんなことをしていたら、他の魚からすればメリットがないわけですから、他の魚はホンソメワケベラを置いて、さっさと泳ぎ去ってしまい、ホンソメワケゲラはエサである粘液にありつけなくなってしまうのです。
なので仕方なしに、寄生虫もついでに食べて掃除をしてあげているのです。
ホンソメワケベラの気遣い・思いやり
ホンソメワケベラは、1匹でいるときと、2匹でいるときを比較すると、2匹でいるときのほうが、粘液を食べる割合が半分程度に低下していました。
これを独りよがりな行動を控えて、他者と協調しているととるかどうかは、難しい問題がありますが、生きていく術として、こういった性質がDNAに組み込まれているのかもしれません。
実際に、水槽で飼っているホンソメワケベラに、エサとしてエビとサメ肉を与えたところ、1匹の場合は好物であるエビを好んで食べるのですが、2匹の場合は、エサを分け合う形で、エビを食べる量が減り、サメ肉を食べるのです。
こんな小さな魚でも、生きていくために、相手への気遣いや思いやりというものを持っているのかもしれません。
まあ、魚にそんな気遣いや思いやりという心があるかどうかはともかく、種が生き残っていくために、こうした性質がプログラムされているのかもしれません。